時の経過忘れさす産業景観
北海道西部に位置し日本海に面する小樽市は全国に知られる観光都市だ。JR小樽駅を降りて中央通りを港に向かって少し進むと、明治から昭和にかけ北海道発展の原動力となった多くの「北の産業革命」の遺産が目に飛び込んでくる。

7分ほど歩くと、手宮線跡に着く。幌内の石炭を港から積み出す目的で、官営幌内鉄道の最初の開業区間として敷設された。1880(明治13 )年に開通、1985(昭和60)年に廃線となった。今は線路を残したオープンスペースとして生まれ変わり、すぐ近くの運河と併せて散策を楽しむ観光客の姿をよく見かける。
鉄道ファンならずとも訪れてほしいのは小樽市総合博物館。石炭輸送を担った鉄道施設や50両もの鉄道車両が保存されている。その中の1つ、機関車庫三号は、1885(明治18)年竣工で、現存する機関車庫として最古のものだ。手宮線
跡とともに日本遺産の構成文化財となっている。

博物館本館に入ると、米国の西部劇から抜け出てきたような蒸気機関車が待っていた。「しづか号7100形」。1884(明治17)年に米国ポーター社で製造、翌年、輸入され幌内鉄道で活躍した。

その後に展示するのは、一等客車「い1号」。車内を見ると、ストーブや木を基調とした内装の豪華さに驚かされる。貴賓車として使われたというからそれも納得。厳しい自然環境の中でも華やかに活躍した往時に一瞬タイムスリップした感覚に胸が躍った。
小樽はかつて、「北のウォール街」と呼ばれる金融都市でもあった。往時には、支店を構えた銀行が25行を数えた。それらが集まるのが色内銀行街だ。その中でもひときわ目立つのが日本銀行旧小樽支店。東京駅の設計で知られる辰野金吾らが設計に携わり、建築に3年の歳月をかけて、1912(明治45)年に完成した。重厚な建物の屋根には、港を眺望する望桜を含め5つのドームがある。長く小樽金融街の中心だったが、2002年に廃止。今は金融資料館となっている。

小樽の全景を一望しようと、天狗山に登った。小樽駅前からロープウェー乗り場までバスで行けるので便利だ。遠くに日本海の荒波から港を守る北防波堤が見えた。これも構成文化財で、建設から100年以上経った今もその機能を果たしている。

