神話から続く製鉄文化
島根県東南部の奥出雲地域に根差しているたたら製鉄は1400年以上前から続く日本古来の製鉄技術を誇る。その技術には、自然環境や文化、人々の暮らしなど多くのものが関わって成り立っている。

「たたら」とは、古事記や日本書紀にもその名が記載されている日本の製鉄技術で使われる足踏み式送風器具「鞴ふいご」の通称だ。鉄を作るには、まず粘土で築いた炉に砂鉄と木炭を交互に入れる。鞴で風を送って木炭を1400度以上の高温に燃焼させることで、砂鉄を還元して鉄を生産していく。三日三晩の操業で鉧けら(粗鉄)ができ、日本刀などに使われる高品質の玉たまはがね鋼が採れる。

たたら製鉄の全貌を知るにはまず、奥出雲町の「奥出雲たたらと刀剣館」を訪れるのがいい。JR木次線の出雲横田駅から徒歩15分で着く。出雲神話に登場するヤマタノオロチの鉄製モニュメントが出迎えてくれる。

毎月第2日曜と第4土曜の2回、日本刀の鍛錬風景が公開されている。これは1993年に開館して以来続いている。
また、日本で唯一たたら製鉄を続けている日にっとうほ刀保たたらでの操業の様子はパネルと映像で紹介している。見どころは、たたら操業を支えている地下施設の実物大断面模型。その規模と複雑さと巨大さは自分の目で確認しておきたいところ。
美しい日本刀も見逃してはいけない。アニメ「鬼滅の刃」のブームも同館の注目度アップに一役買っている。展示品が主人公の竈か ま門ど炭治郎が使っていた日輪刀に似ていると話題になり、ここ数年、訪れる人は増えているという。

また、奥出雲地域はたたら製鉄で隆盛をきわめた名家の屋敷群が点在しており、そのうち菅谷たたら山内はアニメ映画「もののけ姫」の舞台にもなった。数多くある屋敷や倉庫は、江戸時代にタイムスリップした気分にさせてくれる。

砂鉄採集の際にできた鉄か ん な 穴流しの跡地は放置されることなく、耕地化され棚田として再生された。製鉄と農林業が共存する風景は、国内でもこの地域特有の美しさを作り出している。「都会の喧騒を忘れる」という表現がぴったりの場所だ。

