恵みに感謝表す神事
島根県西部(石見地方)の中心都市で日本海に面する浜田市は「神楽のまち」として全国に知られ、世界からも注目を集めている。

古来より、この地域には海や山の恵みを与えてくれる大元神への感謝を表す大元信仰が根付き、そこから生まれた大元神楽が石見神楽のルーツと言われる。このため、30を超える演目は神を迎える「儀式舞」と、神話や説話を基にした「能舞」に大きく分けられる。

代表演目「大お ろ ち 蛇」は、1970年の日本万国博覧会(大阪)のメインステージで演じられ、石見神楽を世界に知らしめた。日本遺産に認定されたのはそれから半世紀がたとうとする2019年4月だった。

神楽を舞う団体は浜田市だけでも50以上、石見地方全体では150以上を数え、国内ばかりか海外公演も多い。当地を訪れる人は毎週土曜日、三宮神社の厳かな雰囲気の中で夜神楽を鑑賞することができる。正月4日は休演だが、元日は美又温泉会館で特別公演が行われる。年の初めに、美人・美肌の湯として知られる温泉で体を癒やし伝統芸能を堪能してはいかがか。
浜田城跡近くの浜田城資料館に、神楽愛好家の竹内惟臣さんが収集した長浜人形が252点も展示してある。江戸中期から伝わるこの人形は土で作られたもので、この技法が神楽面の制作に応用されている。竹内さんは市内の自宅敷地内に石州神楽堂を構え、そこには豪華絢けんらん爛な衣装、面など石見神楽に欠かせない伝統品の数々が所狭しと飾っていた。


石見神楽を語る上で欠かせないのが石州和紙。神楽面は粘土型に和紙を貼り重ねて作られ、衣装の模様も和紙を土台に刺繍されている。大蛇に用いる蛇胴は約17メートルもあり、これなどは軽くて丈夫な和紙がなければ生まれなかったろう。同市三隅町にある石州和紙会館は、ユネスコ無形文化遺産として知られる「石州半紙」や石州和紙の歴史や技術を学ぶことができ、また紙すき体験もできる。浜田市を訪れるならこちらにも足を運んでみよう。
浜田市街地西端の高台にある粟島公園からは夕日に映える浜田漁港が見下ろせる。その一角に「烈女お初の碑」があるが、これも神楽に縁が深い。お初は主人の仇討ちをした女性として歌舞伎「加賀見山旧錦絵」として描かれ、石見神楽でも演じられる悲劇のヒロインだ。

