憲法に家族条項が不可欠

 「私は日本が子供の天国であることをくりかえさざるを得ない」──大森貝塚を発見した米国の動物学者エドワード・S・モースの言葉だ。英国人旅行家イザベラ・バードや、駐日英国公使オールコックも幕末から明治の日本を「子供の楽園」と評した(渡辺京二『逝きし世の面影』)。

 「こども家庭庁」が発足してから4月1日で丸1年。子供政策の司令塔として「こどもまんなか社会」、つまり子供の利益を最優先にした取り組みで「子供の楽園」を実現することを目指して出発した。

 日本では今、少子化、児童虐待、貧困、ヤングケアラーなど様々な問題が噴出している。同庁はこれらの問題に縦割り行政の弊害を打破しながら立ち向かうというが、その道のりは険しい。

 たとえば、少子化問題。昨年の年間出生数は76万人を切り、8年連続で過去最低を更新した。現金給付や子育て環境整備中心の施策の失敗だ。そんな中で、日本をかつてのような「子供の楽園」にするには、戦後社会が抱える根本的な問題にメスを入れる必要がある。

 憲法に「家族条項」がないことだ。子供の問題の背景には、家族の崩壊がある。戦前を過剰に悪く見る風潮の中で、個人主義が横行した結果である。同庁発足前、名称を家庭を抜いて「こども庁」にする案が出たが、それは家庭に個人を抑圧するという負のイメージを抱く左翼的な政治家や学者が少なくなかったからである。

 子供の楽園の復活には、家族の復権が不可欠。そのためには憲法に家族条項を入れ、家族の価値についての国民の意識を変える教育が必要である。そうでなければ、子供を「権利の主体」と考える同庁が個人主義(子供中心主義)をさらに横行させる恐れがある。

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