第30番札所・弘安寺(会津美里町)

日本遺産[60]ー会津の三十三観音めぐり

東北に栄えた「仏都」

 福島県会津は東北地方で唯一、古事記に名を残す地だ。古いにしえの昔から仏都として栄え、数多くの仏像や寺院が残り、今でも「仏都会津」として訪れる人々に親しまれている。

 日本遺産「会津の三十三観音めぐり」は、三十三の観音を含めて135の構成文化財が17の市町村という広範囲にまたがっているので、とても1日や2日では見きれない。そこでポイントを絞って巡ることにした。

左下り観音堂(会津美里町)
左下り観音堂(会津美里町)

 最初の巡礼地に第21番札所・左下り観音堂を選んだ。下調べで写真を見て、一風変わった建造物に惹かれたからだ。県道から細い山道を車で登っていき、駐車スペースからさらに徒歩で山道を登る。鬱蒼と茂る森の中を行くと、忽然と遺跡のような建物が現れた。

 岩を切り開いて建てられた見事な木造三層閣の観音堂。平安時代の建立と伝わる。鎌倉時代には修験道で修行を行う前に籠もる行堂として使われていたようだ。

弘安寺のわらじ守
弘安寺のわらじ守

 第30番札所・弘安寺中田観音は野口英世の母シカが深く信仰した寺として知られる。英世の火傷治療と立身出世を願ったという。ここには国指定重要文化財の十一面観音像がある。訪れた日は臨時の休館で拝観は叶わず。寺の仁王門には願掛けのわらじ守がいくつも掛けられていた。

 第1番札所の大木観音堂は、本尊を十一面観世音とするお堂だ。創建年代は不明。会津若松市の北の喜多方市にある。第1番とは言っても簡素な佇まい。素朴な感じが「仏都会津」の魅力なのかもしれない。

第1番札所・大木観音堂(喜多方市)
第1番札所・大木観音堂(喜多方市)

 さらに北へ行くと願成寺という浄土宗のお寺にたどり着く。創建700余年の古刹で、江戸時代、会津藩主の保科正之が庇護したことで知られる。御本尊は国指定重要文化財・木造阿弥陀如来及両脇侍坐像で、古くから会津大仏と呼ばれ、地域の人々の信仰を集めてきた。

 門をくぐると、本堂の前で、寺庭(住職の奥様)が訪問客と何かを話している。近づき挨拶すると、お寺や仏像の由緒などを説明してくれた。境内にはゆったりとした時間が流れている。「花の季節にまた来てください」と言われた。春、坐像はまた違った表情を見せるのかもしれない。

旧正宗寺三匝堂(会津若松市)
旧正宗寺三匝堂(会津若松市)
旧正宗寺三匝堂
旧正宗寺三匝堂

 巡礼の最後には旧正宗寺三匝堂を選んだ。通称「さざえ堂」と呼ばれるこの建物は内部が二重の螺ら せん 旋構造になっている。往復路が別の通路になっていて、参拝者がすれ違うことなくお参りができるという世界的にも珍しい建築様式を用いている。かつてはその二重螺旋のスロープに沿って西国三十三観音像が安置され、参拝者はこのお堂をお参りすることで三十三観音参りになぞらえた。明治期の廃仏毀釈により三十三観音像は撤去され、今はないのが惜しい。

旧正宗寺三匝堂内部下り
旧正宗寺三匝堂内部下り
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